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About IUU | IUU漁業とは

IUU漁業とは

IUU漁業は、違法・無報告・無規則(Illegal, Unreported, Unregulated)な漁業の総称であり、国家や国際社会により定められている法的な保全管理措置に反して行われる漁業活動を指します。

違法漁業
国家や漁業管理機関の許可なくまたは国内法や国際法に違反して行う漁業
無報告漁業
法令や規則に反して無報告または誤報告された漁業
無規制漁業
無国籍または無加盟などの船舶が規制または海洋資源保全の国際法に従わずに行う漁業

世界では、年間2,600万トンほどのIUU漁業由来の水揚げがあると推定され、その金銭的価値は日本円で1〜3兆円にもなります。これは、日本の年間漁業産出額と同等またはそれ以上の規模です。持続可能な水産資源管理への最大の脅威の一つであるとともに、真っ当な水産業を生業とする者を不公平な競争に晒すものであり、大きな国際問題として注目を浴びています。

世界の水産資源の現状とIUU漁業の脅威

現在、日本で私たちが普段口にしているお魚の6匹に1匹が、IUU漁業に由来している可能性が高いとされています(日本の消費量の約半分が輸入品。輸入品の約3割がIUUの可能性)。世界の水産資源の資源量についてみると、資源量に余裕のある水産資源は年々減っており、持続が難しい(=枯渇の危機にさらされている)水産資源が2017年には全体の約35%に達しています。

その原因の一つとして、「乱獲」や「密漁」の問題があります。IUU漁業はこうした乱獲を防止するために定められたルールに反して行われるため、持続的な漁業に対する最も大きな脅威であり、持続可能な漁業の実施に欠かせない資源量評価の信頼性及び有効性を損ねます。このため、水産資源の回復に向けて不可欠な取組みとして、IUU漁業に対する規制の強化が世界的に注目を浴びています。

IUU漁業に関する認知度はまだ高くはありませんが、この問題の重要性について多くの方々へ周知し、必要な取組について考えるきっかけを作ることが、将来にわたる水産資源の有効利用や、日本の漁業の活性化にも繋がると考えます。

国際社会のコミットメント

1999年に国連FAO水産閣僚会議のローマ宣言において「全ての形態のIUU漁業に効果的に対処するために地球規模での行動計画を策定する」旨が決定され、FAOにおいて初めて「IUU漁業」について提示されました。

2001年には、国連は、IPOA-IUU(International Plan of Action to Prevent, Deter and Eliminate Illegal, Unreported, Unregulated Fishing) =「IUU 漁業を防止、抑止、排除するための国際行動 計画」を発表し、各国に市場関連措置の実施を求めました。

その後、2015年9月25日第70回国連総会で採択された、持続可能な開発のための2030アジェンダにあるIUU関連の目標は以下になります。

持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット
目標 14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する

14.4 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。

14.6 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、 世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、 2020 年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無 報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を 抑制する。

また、G20大阪サミットにおいては、首脳宣言に下記のようにIUUの撲滅が、明記されました。

G20首脳宣言(大阪宣言)の40番に IUU撲滅について
「違法・無報告・無規制(IUU漁業は、世界の多くの地域において、引き続き海洋の持続可能性にとって深刻な脅威となっているため、我々は、海洋資源の持続的な利用を確保し、生物多様性を含め、海洋環境を保全するために、IUU漁業に対処する重要性を認識しIUU漁業を終わらせるという我々のコミットメントを再確認する。」と明記されました。(2019年6月)

IUU漁業の撲滅に向けたロードマップ

「安価な水産物の大量供給に対する市場の需要」がIUU漁業の世界的なまん延の根底にあるという考えに基づき、世界の主要な輸入水産物市場では、IUU漁業に由来する可能性を否定できない水産物の市場流入を阻止する法規制の導入が増えています。

EUの取組み

■2010年より、域内産の水産物のトレーサビリティを強化するとともに、野生海産魚とこれを原料とするすべての加工品の輸入時に、輸出国の認定を受けた漁獲証明書の添付を義務付け

■EU加盟国の輸入業者は、非加盟国の輸出業者から受け取った漁獲証明書や加工申告書等を輸入国の管轄当局に提出し、EU加盟国の当局がこれらを検査

■輸出国が適切なIUU漁業対策を行っていないと欧州委員会が認めた場合、その輸出国に対してイエローカードを発出して改善措置を共に協議し、それでも改善が認められない場合はレッドカードを発出して、その国からの水産物の輸入を禁止

■2026年より、EUはIUU漁業規制の更なる精度向上を目的に、EU加盟国の輸入業者に対し、従来の署名や押印がされた紙媒体での書類の提出を廃止し、EUが運用する電子システム「CATCH」への電子的な書類提出を義務化する予定

米国の取組み

■22018年より水産物輸入監視制度(SIMP)が施行され、輸入水産物のトレーサビリティを強化

■リスクが特に高いとされる水産物13種(水産物輸入総額の約60%)について、米国外に所在する輸出者から、米国内の輸入者に対する情報提出を義務付け

■SIMPの最大の特徴は、輸出者が提出した情報の信頼性を確認し、米国海洋大気庁(NOAA)に提出する責任を負うのが輸出国政府ではなく、米国内の輸入者であるという点。現在、対象魚種の拡大および情報提出・管理システムの電子化の必要性が訴えられている

日本の取組み

■EUおよび米国に次ぐ世界的な水産物輸入国である日本では、2022年に、IUU漁業由来水産物の国内流入阻止を目的に「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」(流通適正化法)が施行され、対象に指定された4種(イカ、サバ、サンマ、マイワシ)の輸入には適正な「漁獲証明書」の提出が必須に

■2025年現在、「外国為替及び外国貿易法」による輸入管理の対象であるマグロ類などと合わせ、日本の輸入水産物の約30%(重量ベース)が、日本のIUU漁業対策としての輸入規制の対象

■2024年に水産庁が主催した有識者検討会議では、サメ類およびエビ類の対象追加および報告管理システムの電子化についての検討を開始。次の有識者検討会議の開催は2026年に予定されており、対象魚種拡大、電子化、世界主要市場間連携を3本柱とするIUU漁業撲滅ロードマップの作成が求められている

その他の主要な市場国

■韓国やオーストラリア等、水産物輸入が急速に拡大している国でも、IUU漁業由来水産物の国内流入阻止を目的とする輸入規制の制定や改善が進行中

■対象魚種、報告内容、管理手段等における政府間の調和がますます重要となる中、日本政府のリーダーシップに期待が寄せられている

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